櫻ぱんだ

② 初めて会った時 可愛い子だなって思ったんだ 色白で細身でおっきな瞳 俺より少し高いくらいの身長は ヒールを履くと 俺と合わせる視線が下向き加減 気にする人もいるだろうが 俺は気にならなくて 逆にその角度から見える表情も イイなって思った 喋ってみたら良く笑うし 俺の話を凄い凄いって 何でも興味深く聞いてくれて 気づけば絵の事や あんまり女の子には話さない 釣りの事も話してて 引かれるかなって思ったけど 私も行ってみたいって 言ってくれたから 『見つけたかもしんない』 俺は確かにその時思ったのに 「青海さんマズイです 次の週刊誌に載ります」 マネージャーに言われて 目の前が真っ暗になった 「ごめん…」 事務所の会議室 テーブルの中央に今朝一番で スタッフが買ってきた週刊誌 広げられてるページには 間違いなく俺がいた 「出ちゃったもんは しょうがないですよ 次の対応が大事でしょ」 「コンサート前だから特にな この時期ファンの子たちを 動揺させるのはマズイ」 「青ちゃん…大丈夫だよ」 俺と同じく 雑誌を取り囲むように 座ってるメンバーは 口々に言ってくれるけど 「………」 向かい合わせに座ってる彼は さっきから一言も発せず 腕組みしたまま一点を見つめて 微動だにせず何事か考えてる その無言の圧力に 仁野も碧葉ちゃんも 抹駿でさえチラチラ気にしてて はぁ――――――っ 会議室に響いた溜め息に 空気が凍った 「青海さん 軽率過ぎるよ 今回の件は貴方が100%悪い」 「はい…」 ちょっと祥ちゃん! そんな言い方… 言いかけた碧葉ちゃんを 横の仁野が無言で止める 俺はそれを 気配で察しただけで 真正面から俺を見据えた 鋭い視線から 逸らすことも出来ず 見つめるしかない 「ただの友達なら そこまで言わないけど 大事な人なら尚更もっと 慎重にするべきだ 今回の件は貴方だけじゃない 事務所やスタッフや 俺たちに関わる全ての関係者に マイナスになる そして何より大事な彼女も 傷つけたんだよ」 「はい…」 祥くんの言葉が心に突き刺さる 彼が言うのは全て真実 俺が恋に浮かれて 周りへの注意を怠ったばかりに 皆に迷惑掛けてあの子にも… 「どうするの?」 「え」 「彼女」 「………もう会わない」 ここまで騒ぎになってしまって 更に関係を続けるのは無理だ 彼女の微笑む顔が 脳裏に浮かんで瞠目した .

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