赤羽道夫

 特殊能力を持つ二つの勢力が人知れず抗争を繰り広げる――。  昔から忍者モノや超能力モノとしてマンガや小説で描かれてきたジャンルですが、もう新しい設定なんかでてこないだろう、と思っていたら、さにあらず。まだまだ人間の発想は柔軟だと思わせました。  メア、という特殊な能力者がもつとてつもない破壊力は、世界を変えてしまうほどで、これはかなりの大風呂敷です。それを両陣営から描ききった本作は、スケールの大きな力作です。  物語中盤まで、双方の対決の火種がぶすぶすとくすぶり、やがて炎を上げて燃え上がり、全面戦争に突入するか――と思わせたところで、突然、その後の世界が描かれることで、実は戦いそのものよりも、はるかに重いテーマを描こうとしていることに読者は気づかされます。  他者と異なる性質や思想を持つ者どうしは共存できるのか、それともどうやっても相容れないものなのか――。物語は意外なラストを迎えます。  一見、アクションを全面に出した王道バトルの形をとっていますが、文章は大人向けのずっしりとした語彙と描写にあふれたものです。ケータイで読めるよう行間を空けて読みやすいようレイアウトされていますが、きちんとした段落で構成された書籍で読む方が適しているように思える「小説」です。その点からも、作者の力量がしのばれます。
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赤羽道夫さんへ とても丁寧なレビュー有り難うございます。 すごく嬉しいです。そして好評価に恥ずかくなってしまいます。 人間って似たような事を繰り返しながら、良い方向へ進んでいるのだと考えたいです。 重ねますが最後まで読んで頂けた上に、レビューまで本当に有り難うございます。 m(__)m

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