いちごけーき

クロスト7周年。1926ページから。ネタバレ注意! 桃色の癖っ毛のある髪。 空と水の色の世界では随分と目立つ色のそれを指でくるくると捻りながら、少女は金色の瞳でロークを蔑むように見遣った。 「ロークさぁ分かってんの? 11月23日が、何の日だったかを」 妹の姿を形取った魔神を、ロークは悪魔か何かと思い違えてしまいそうだった。 「やめろよ……」 命令形は寧ろ懇願に近かった。 顔を歪めて、泣きそうな瞳で睨んでくるロークに、ユエは乾いた笑みを漏らす。 その後、彼は完全に青年の妹を演じ切った。 「じゃあ、特別サービス! 今からでも言っていいよ!」 パッと花が咲いたように笑い、とんでもないことを口にする。 ロークは大剣を持つ手を震わせた。 「お前……俺が……その日の事……」 「うん?」 「忘れてたって、いう事を……」 「知ってるよ?」 途切れ途切れのロークの言葉に、リリーの顔でユエは首を可愛らしく傾げた。 「とっても大事な日だよね。でも、何も言わないわけにはいかないでしょ? ほら、言ってよローク」 ロークは腹の底から怒りが湧き上がるのを感じた。 歯を食い縛り、血に汚れたそれを剥き出しにする。 瞳に殺意を宿し、小さな少女の胸倉を片手で掴んだ。 リリーは表情を変えない。 もう片方の手の中にある大剣が、水面を僅かに斬った。 「………ッ」 心底、この魔神が憎い。 殺してやりたいとすら思う。 だが―――、 「無理だ……」 どうしても大剣が上がらない。 振り上げられない。 自分の口が、動く事を拒む。 今更、何を言えば良いというのか。 ロークの表情が情けなく崩れた。 力無く、胸倉を掴む手が垂れ下がる。 少し水面から持ち上がっていた少女の体が、ストンと両足を水につけた。 波紋が広がる。 可愛らしい表情でロークを見据えていたリリーの瞳が、急激に冷めた目の色に変わる。 「言えよ、クロスト7周年だって」 一日遅れの記念日を、少女の姿を形取った者が口にした。 ――――――― 1日遅れてごめんなさい!クロスト7周年です!執筆は相変わらずノロノロですが元気です!いつも閲覧ありがとうございます。これからも温かく見守っていただけたら幸いです。  

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