白羽莉子

「金髪ロリータの主食」  金髪ロリータは羅生門にいた。目の前には老婆がいる。  老婆の重力に逆らうことのできなくなった皮膚はたわみ、背中は地面に対して直角とも見えるほど曲がっていた。 「おい、クソババア。何故髪の毛を引き抜く」 「鬘にする為だ。生きていくにはしょうがない」 「では、私も生きていく為になすべきことをしよう」  金髪ロリータは老婆の引き抜いた毛髪を鷲掴みすると、それを飲み込んだ。  老婆は目を丸くした。わしの毛を、と言いながら右手をわなわなと震わせ、金髪ロリータの右腕を掴む。 「なぜ全て口にした。これはわしが採ったものだ」  金髪ロリータは嘲笑った。左手で腹を抱えて、目を大きくして、老婆の瞳を捉えて、ただただ高らかに笑う。 「採った。違うだろう。これはクソババアが死人から盗ったものではないか。どうせ盗ったものだ。私が摂ったところで問題はない。私もクソババアと同じように盗っただけだ。どうしてクソババアが私を咎められる」  金髪ロリータは老婆の手を振りほどく。ただ老婆は金髪ロリータを見つめた。 「せめてもの情けだ。教えてくれ。なぜお前はわしの盗った毛髪を摂った」 「金髪ロリータアイドルとして不老不死を保つためには毛髪を食するしかない。だからだ。平安京が荒れても、私のアイドル家業は廃れてはならない。もう二百年もアイドルをしているのだからな」  金髪ロリータは老婆に背を向けた。  金髪ロリータは今日もトップアイドルとして活躍する日を、夢見ながら毛髪を食する。
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お題「金」「ロリータ」「食べる」by弟 遊びすぎたことに反省はしていないが、後悔はしている。感想はコメント欄まで。ぜひ今後の白羽の為によろしくお願いします。

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