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エアな奈々子
美森 萠
2015/12/5 22:56
読み終えて、腹の底に冷たく重い鉛を飲み込んだような、ぞわりとする感覚を覚えました。 物語は、引きこもりがちな弟に訪れた初めての恋人の存在を訝しく思った兄が、興信所にその女性の調査を依頼するところから始まります。 この調査に当たる探偵は二人。優秀で担当を幾つも抱える三条愛美と、書き入れ時でも仕事に余裕がある(要は人気のない)先野光介。 調査の結果、二人はそれぞれ違う結論を見出します。 見たままを信じる先野と、直感で真実を見出す三条。その結果に、「ああやはり先野はできの悪い探偵なんだな……」と読者は納得するわけですが、物語の最後、兄のモノローグで全ては一変します。 彼らだけではなく、読者もきっと、自分の足元を掬われたような感覚に陥ることでしょう。その証拠に、先野と三条、二人が見出した結論を証明する手立ては何もないのです。 逆もまたしかり。間近に結婚を控えた兄も、そして私たちでさえも。 この作品、カテゴリーは『ミステリー・推理』になっていますが、ある意味ホラーとも言える。 弟の恋愛が、事件の始まり。そして兄の恋愛が、不穏な形で物語を締めくくります。 『冬ラブ』と題したこのイベントで、まさかこのような作品に出会えるとは思いもしませんでした。 さすが赤羽さん、見事に(もちろんいい意味で)期待を裏切ってくださいました。
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赤羽道夫
2015/12/6 20:14
深読みに恐れ入っております。 作者ですらそこまで考えてませんでした。 この展開なら、こうなるはずだし、こうしないと、ストーリーとしてのバランスがとれないだろうという構成で、書きました。 実は、奈々子は催眠術だけの存在にしようかどうか、最後まで迷いました。 見えない、なんて、へんな存在にしてしまうと、リアリティが失われて、作品世界が壊れてしまうんじゃないかと。 しかし、それでは明二は救われず、敬一も幸せになるかどうかわからずで、ショートショート的なギャグオチになってしまいます。 兄弟とも、未来があるようにもっていくのが、恋愛物の王道だろうと、思い切って奈々子をあんな形で描いてみました
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