イノ

(応援) 海外を舞台に予知夢、遺伝子、脳科学を題材に取り扱った壮大なスケールで描かれたこの作品は、単なるアクション・ハードボイルド・サスペンスといった言葉だけでは表せない、もっと深い人間の心理であったり、不条理な世界や思想、それぞれの持つ死生感といったものを表現した小説であるようにも感じました。 物語は息を呑むような激しいアクションシーンもあれば、ふっと頬が緩む穏やかな場面もあったりと緩急を繰り返す構成で、これだけの文字数でも読者を飽きさせることはありません。 永(主人公)を視点に、彼も含めそれぞれのキャラたちが抱える孤独と愛を描いた作品でもあり、永の真っ直ぐな生き方は時に辛くなるほどの場面を生み出すけれど、諦めない姿や、誰かを強く想う気持ちは読んでいて清々しい気持ちにもさせられます。 また、読者のほとんどの方が同じ意見だと思いますが登場人物がとても魅力的です。 よくアクション系だと勝手に正義と悪の線引きをしてしまいがちですが、ここがサトリさんの小説の凄いところ。わかりやすいキャラで言えば、ジェイド。最初は『なんて奴だ!』なんて思ってたけど読了後は『なんだか憎めない…』なんて思ってる自分がいる。一人称で描いてあるにも関わらず、読者にこういう感覚を与えられるのは、やっぱりサトリさんの物語の進め方の上手さかなぁと思います。 そして、ラストにいたっては。。。 完全に読者泣かせ!(もちろんいい意味で) くーって唸っちゃいます(笑) これは最後まで読んだ人にしか味わえない感動ではないでしょうか。 緊迫したシーンや読んでいて辛くなる場面も多かったのに、なぜか最後は優しい気持ちで心が満たされている。 あの余韻からは正直なかなか抜け出せないですよ(笑) しばらく経った今でも、ふと彼らに会いたくなります。 ボリュームのあるお話なので書籍として手元にあると、仕事で忙しいときでもちょっと空いた時間に好きなシーンをパラパラと捲って読めるのになぁなんて個人的に思ったりしちゃいますね。 そんな素敵な作品です。 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。 執筆お疲れ様でした☆
10件

この投稿に対するコメントはありません