「NASAは、UFOに対して長年取ってきた態度のために、無用な組織とされることを恐れています」 その怪文書がレイン公の白城に送られてきたのはおよそ、二日前にさかのぼる。わりかしと大きめな王座に座る、銀の装飾に包まれた壮麗の城主は、小さく溜息ついた。 「はぁ、NASAって、いまさら出されても、 もう滅んだ組織じゃありませんか」 電子暦五十一年。 かつて繁栄を誇っていた 肉体を持つ人類は静かに消失した。 人類を含む生物全ては常世の闇に沈み、 地球もろとも消滅したのである。 それが五十年前の話だ。常世の闇に身を落とした生物たちの魂は、電子空間をさまよい、やがて安住の場所をみつけた。NASAが極秘で開発していた。電子情報体が活動できる空間、それがネット小説RPGエブリスタの正体だった。 つまり、今ここで王座に座り、 憂鬱な表情でこの怪文書の意味を紐解いたところで、なんの益体も得ないのではないかと出口のない思考に巡る、レインという城主も、一度は肉体を分解され、魂の情報によって命を再構築された。ひとりの人間の生み出した幻影。この城も、あの王座もすべて、何かもが電子という物体によって作られるオンラインゲームの世界だった。 「エブリゲートが公に現れるにつれて、 UFOが姿を姿を表すでしょう」 エブリゲート、それはこのオンラインRPGにおける最終ダンジョンにあたる階層であった。いまだそこに足を踏み入れたユーザーはひとりもいない。 もしもUFOという単語が、 危険な意味を持つ暗号ならば これ以上に血生臭い話はない、 ーーたしかに、かつて人類は そのUFOの存在によって 一度は消滅させられているのだからーー。 今回もそれが 世界の終わりを意味するするならば。 レイン公はエブリスタに特殊警戒措置を 女郎花という女将軍に提訴しなければならない。 だが、それをするには まだ決定的な証拠がたりない。 何者かの悪戯なのかもしれない。 踏み出すにはリスクが多く、危険な道であった。 「あの娘に調査を依頼するか」 レイン公爵はひとりのユーザーの書類を眺めていた。公爵とは同名の、都市伝説に見識の深い彼女に依頼したら、何か手がかりを掴めるかも知れない。壮麗の城主は穏やかな笑みを浮かべてメイドにその胸を伝え、草原へと旅立った。愛馬、テトラが歓喜に吠える。今ここに城主のひとり行軍が始まったのである。                   
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うわっ( ´艸`)💕 何、このワクワクする展開はΣ( ̄□ ̄)! 続きが楽しみで仕方ないわ(゚Д゚)✨
にひひ、ありがとうございます? (好評なので調子に乗ってもう1話書いてみます、3時間後にまた連絡しますぉ(^o^)/)

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