鮎川 未夢

「二分の一成人式」を迎えようとする、のぞむくんは10歳。 別れて暮らす父親に会いにいこうと決意する。半分大人なんだから大丈夫だと言い聞かせて。 何か新しいことに立ち向かっていく門出の日って、今さっきまで、そこにいた自分とは別の自分が玄関に立っているような感覚になると思うのです。 だから、のぞむくんの決意がひしひしと伝わってきました。 自分の意識が変化するときって、なんとなく見てたはずなのに、やけに細かいことまで見えるんですよね。そうそうって頷いていました。 のぞむくんの気持ちになって私も京急線の乗り場を探し、ローズレッドに白いラインの鮮やかな車体に乗りこんでいました。 情景描写が少年の視点になっていて、スッと物語に溶けこんでいくのです。 窓から見える光景は何もかも初めて。普段はなかなか気づけない心の揺れにも戸惑っているようでした。 気持ちが不安になって、まだ半分子供なんだと言い訳してみたり、かと思えば引き返せないと、自分を奮い立たせてみたり。ここまできたんだからと自分を評価してみたり。 もう堪らなく、のぞむくんが愛おしくて。少年の心が繊細に表現されていてグイグイ引き込まれてしまいました。 のぞむくんが父親の心に触れ、影に向かって頷くシーン。その描写に、のぞむくんの心中が表現されていてグッとこみ上げてきました。 のぞむくんのお姉ちゃんも、そうだったんですね(^^) ラストシーンはもう涙腺崩壊に。 もくもくと圧迫感ある大きな雲が、やがて夕焼け空に溶けこんで優しく成長を見守っている、そんな温もりを感じました。
4件・1件
未夢さん、レビューありがとうございます。 今回、情景描写を主人公の気持ちにリンクさせるよう、意識して書いてみました。 少しくどかったかな、と思う反面、それを読み取ってくださって、工夫してみたかいがあったなあ、と嬉しくなりました。 十歳ののぞむの気持ちの揺れ、不安、ときどき自負。そんな微妙なお年頃を描けていたら嬉しいです。(///∇///) たぶんこの家では、これが子供たちの通過儀礼なんでしょうね。(父に会って月餅を持ち帰る単独ミッションです←) 父親の決断には賛否両論かとも思うんですが、ラストに少年の成長、そして温もりを感じていただけて幸いです。 励みになりました。ありがとうござ
1件

/1ページ

1件