加藤みゆき

元ヤクザの幹部、栂大輔くんと、わけのわからないうちに本庁付けで昇進していた警部補、深澤大輔さんの…… うーん、何て言ったらいいんでしょう。 ちょっとジャンル分けは悩みますね。 読まれた方がそれぞれで判断してください。 欠片を集めて、ただ人間の形に整えただけのような青年、栂くんが、不器用で涙もろい深澤さんと共に時間を過ごすうちに、 なんとなく変わっていくという、ヒューマンストーリーな展開が、とても好きです。 まず深澤さんの何者も放っておけないお人好しキャラクターは、すごく好感がもてるし、魅力的。 ちょっと卑屈ですぐいぢける様子もキュートで、どこでもズレた感じにモテる(?)理由に、激しく納得です。 栂くんも、素っ気ない口調や素振り、自分で自分が好きになれない信じられない様子も、 生まれや生い立ちを知れば納得できるし、 深澤さんにいたずら仕掛けたり皮肉いったり、意地悪したりする様は、 何度も何度も親の愛情を確かめずにはいられない幼子みたいで、なんだか切ないです。 こんな魅力的なふたりの物語ですが、前半がものすごく惜しいと思いました。 ストーリーのリズムがずっと一定なのですよねぇ。 時間軸に沿って正確に話を進めていくのが、筆者さまの文体ですが、長編なので、物語の導入に読者へのサービスを持ってくるといいと思います。 あと、キャラクターに自分を投影しながら読む読者も多いです。 それがてっとり早く読者さまにキャラを印象づける手法でもあるので、少し想像の余地を残してくれると嬉しいかな。 考えていること、全部伝えてくれなくてもいいと思いますよ。 独特な漢字に(ふりがな)を振ってまで、物語のムードを作り上げていく筆者さま。 ものすごく丁寧な人だーと、素直に感心しました。

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