*アノマテカ*

お妃さまが好きだなぁ。 この作品の中でお妃さまだけが王さまの(本当の意味での)味方になりえる存在だったように思います。 結局は王さまのことも国民のこともどちらも大事で、誰の敵にも味方にもならなかった方ですが、王さまがお妃さまに何かを求めれば何かが変わっていたんじゃないかと思います。 いったい何を求めていればよかったのかはわかりませんが、それを思うとふんわりと悲しい気持ちになりますね。 粗末な木綿のハンカチを「丈夫でとてもいいものだわ」と明るく言うところがとても好き。 王子さまのお兄さまと元フィアンセも、もしかしたら王さまの敵ではなかったのかもしれませんけどね。 聡明な方々みたいでしたし、もしかしたら自分達の関係を隠していたことを王子さまに申し訳ないという気持ちも持っていたかもしれませんね。 王子さまが真実を問いただそうとせずに簒奪に及んだ部分は賛否が分かれるところだと思いますけど、私はよかったと思います。 もし、真実を問いただして、お兄さまの口から「本当は悪いと思っていた。申し訳ない。」などという言葉が飛び出せば、きっと王子さまは何もできないまま、その言葉が真実なのかどうか、真実であったところで自分の苦しみはどうすればいいのか、悩み続けるしかなかったことでしょう。 そのことをきっと、王子さま自身がわかっていたからこそのあの行動なのだろうなと思いました。 王さまがほしいものは、結局何だったのでしょう……? 目に見えないものをもう一度信じられる心でしょうか? それとも 愛 と呼ばれるものだったのでしょうか? そして、この話を読んでみて、私自身のほしいものは何なのかなと、考えてみたんのですが……ほしいものはたくさんある気がするのですが、どれも本当にほしいものなのかどうかわかりません。 強いて言うなら幸せがほしいですのですが、幸せってなんなんでしょうね? とりあえず私は、大事な人とのハグ、休日の二度寝、ハラペコで食べた豚肉の生姜焼きのひとくちめ、といった幸せを感じる瞬間がたくさんほしいです。 もしかしたら、「もう何もいらない」と思えるほどに満たされた瞬間のきらめきを誰もが追い求めているのかもしれませんね。

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