和高 茉莉

「やれやれまったく夢みたいなことばかり言っていやがる」と、僕は煮えたぎるコーヒーを飲むなどしながらこれを唾棄すべきだとは思うのだけれど、夢というには現実味がありすぎるし、現実というには説得力がありすぎたので、結局は唾ごとコーヒーを飲んで喉を焼いた。ところで僕は春が嫌いだ。僕も? 言いたいことは山ほど、具体的には92ほどある。でも僕はその92を92のまま伝えるすべを持たないので、『かの楽園めいた半球を想いながらひとつだけ伝える』 「何より許せないのはその小ささを美徳としてしまう昨今の無神経だ」 これだけで僕は、この“幻想譚”を空前の傑作、或いは絶後の怪作としてよかった。だってそうじゃないか、『そう』じゃないと、あまりに、アンバランスが、過ぎるじゃないか……。

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