あおい 千隼

レビュー失礼します。 本作の主人公である『山口 友紀』さんの一人称で進む、将来の分岐点についてのおはなしです。 主人公である少女の心の葛藤を題材に、数多の風船と黄金色の特別な風船を心の機微として、比喩を交えてストーリーは進みます。 父が残した居酒屋。母が切り盛りをし、いずれは自身が継いでゆかねばならない。 クラスの生徒たちは己を残して輝かしい未来へと邁進し、そのすがたを横目に既に決められた自身の未来に絶望する、ストーリー中盤での描写。 そんななかで出逢ったひとりの少年。 車椅子の彼と主人公は、けれど居酒屋外のベンチで出逢うという、必然的な流れと淡い恋心がなんとも初々しく思えました。 後半で主人公が立ち寄る喫茶店で、未来を打破する助言をいただき、絶望から希望へと昇華する出来事が起こります。 後日譚での、心の戒めを解き放った主人公に対し、母親の嬉しそうな台詞が物語を締めくくるシーンに、「よかったね」と労いたくなりました。 著者様らしい世界観も生かしつつ、未来とほのかな恋をつづった、素敵なおはなしでした。 ありがとうございました。
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