沙月

※お礼SS※ Xmasの飾りに彩られた寮の食堂で、昼のバイキングに来た灰宮は目を瞬く。 「何してるの、東さん」 「聞かないでくれる」 力無く微笑む東は、どこか遠い目でトレーの皿にランチを盛っていた。 その頭には黒い猫耳が装着されており、周りから嫌という程注目を浴びている。その猫耳は涼都のクリスマスプレゼントだった気がするが。 「なら深くは聞かないけど…その、東さんの趣味に口出しするつもりはないし」 「待って。やっぱり説明するよ。何か凄い勢いで誤解されている気がする」 額を押さえた東は嘆息して肩をすくめた。 「涼都の部屋の呼鈴を壊しちゃってね。これでも付けてろって括りつけられてさ。取れないんだ」 「ふん、それでご機嫌取りに御厨の分の昼食も取りに来たわけか。俺なら断固拒否して部屋に引きこもるが」 「あら杞憂、貴方もご飯?」 トレー片手に杞憂は呆れた顔で息をつく。 「男の猫耳で食欲も何もあったもんじゃないがな」 「君にこの猫耳つけてあげようか。一生取れないようにしてあげるよ」 「断固拒否する」 杞憂は距離を取ったが、灰宮は近寄って猫耳をつまんだ。 「いつまでそのままなの」 「呼鈴が直るまでじゃないかな」 「叩けば直るんじゃないかしら」 「昔のテレビじゃあるまいし。これだから脳まで戦闘民俗は困っ」 笑顔で首を傾げた灰宮に圧力を感じたのか、杞憂は途中で口を閉ざし、がらりと話題を変えた。 「ま、まぁ力任せは否定しない。設楽のも引っ張れば取れるんじゃないか」 「いだだだだ」 「あらまぁ、別の物が取れそうですわよ。髪とか頭皮とか」 * 「何やってんだアイツら」 注目を集めまくっている3人に、涼都は食堂の入口で引いていた。 『君の友達、ちと残念やな』 「東と杞憂は友達じゃない。つか、何しれっと電話繋いでんだよ短編しか出番ないくせに」 『わしの扱い酷すぎん?!』 カイに丁重にして何があるというのだ。 無視して通話を切ろうと携帯に手をかけ 『まぁ君にも、戻れる場所はあるんやないか』 思わず息を呑んだ。呟くように応える。 「俺に帰る場所はねぇよ」 今度こそ通話を切って涼都は息をつく。 自ら捨てたのだ、帰る場所などない。けれど、もし許されるなら 「あ、涼都さん」 「げ御厨」 「涼都これ取っ(ry」 せめて、この温かさだけでも錯覚していいだろうか。

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