たすう存在

悲しみを引き摺ったまま生きる主人公が、不思議な体験を乗り越えて、彼女の愛に気付き生きる希望を見出す―― 王道といえば王道なストーリーですが、その王道の強さを改めて気づかせてくれる作品でした。 「レ」「カルト」などの、フランス語で記される語句や、キリスト教文化圏っぽい台詞まわしが、生きた世界観を演出しています。 第一次大戦後に戦闘機を流用した航空便について、僕は全くなんの知識も持ち合わせていないのですが(実は紅の豚すら見ていません^_^;)、この作品の世界に浸ると、まことしやかにホラ話を吹聴したり、軽口を叩き合ったりする飛行機乗りたちが、地中海上空を行き来する風景がくっきりと浮かんできます。 読んでいる間、ミシェルやクレータと一緒に、『おしゃまなクレーア』号に乗り込み、中継点の街や、エーゲ海の上空を旅しているような気分になれました。 そして緊迫のクライマックス。 主人公の愛したクレーアの姿をとって現れる十字軍のイリュジオン、古の悪霊(アヴィニョンから出立した十字軍という存在そのものも含めて、作者さまのフィクションなのでしょうか? それとも史実? )と、それに対峙する猫のクレーア。 緊迫感がありながらも、どこかしらこの時代に描かれた物語のようにトラディショナルで、だけどもレトロではないリアリティがありました。 クレーアに護られて生き延びた主人公は、再びクレーアを失った悲しみに暮れながらも、愛するクレーアから渡された猫のクレーアに「有難う」と言います。 これは愛するクレーアに向けた言葉であると同時に、やはり、前を向いたミシェルが生きてそこにいる猫のクレーアに向けたものだと感じました。 これからも一人と一匹は、良いコンビで飛び続けるのでしょう。 それにしても猫のクレーアが助かってよかったです。 短いながらも、分厚い世界観の素敵なファンタジー作品でした。 ありがとうございました。
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多数さん今晩は。 素敵なレヴュー有難う御座います。 中々に発想の枠を超えるのが困難で、いつも通りのテンプレなお話なのですが、評価して下さり嬉しいです。 有難う御座います♪ 多数さんも、管理運営お疲れ様でした。 遼さんより。

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