北沢あたる

SNSに集まった匿名のランサーズ。それぞれのスキルを駆使して、裏社会にはびこる悪に立ち向かう。 主人公の一人である透は、女装がスキルのランサーズの一員で、依頼を受け、女性として現場に潜入する。彼は二年前に起きた立てこもり事件により、姉を亡くすという悲しい過去を持っていた。女装をすることで、自分の中に姉の姿を見つけ、姉の光として別の人格を生きているような感覚を得ている。 物語は、過去と現在進行形の二つの事件を中心に展開していきます。 違法風俗店で働かされている少女達の真相を追う女刑事の辰巳と、立てこもり事件で偶然その場に居合わせ、自分の失言により、未来ある少女の命が失われてしまったと後悔の念に駆られる失語症の青年・深見。 二年前に起きたショッピングセンターの事件から始まる冒頭の緊張感を保ったまま、それぞれの視点やバックグラウンドが加わり、重なっていく様は圧巻です。 小説を書くにあたっての沢村さんの武器は、圧倒的な筆力と現代社会に向けた広い視野だと思います。さりげなく文章に織り込む知識(犯人が逃げにくいような履物を履かせる等の)や、業務用ローションや、トイレ点検用の紙をメモ代わりになど、小物の使い方にもひねりがあり、読んでいてとても勉強になりました。 読み手の勝手な思い込みによる辰巳の容姿は、清々しく裏切られましたし、透が窮地に追い込まれた時に振り絞った勇気には、手に汗を握りました。最後に礼門さんから光が残したメモを受け取り、そこに透が頑張った分の救いがあり、胸が熱くなりました( ;∀;) 読み終えた感想です。結局の所、二年前の事件で犯人の与田をそそのかした黒幕は誰だったのでしょうか?与田が犯行を起こすまでの背景も丁寧に書かれていたし、礼門さんの推測では黒幕が事件現場にいたはずだと言っていたので、事件の描写でそれらしき人物が描かれていても良かったのでは?と思いました。失礼御免!m(__)m 事件は解決しているし、犯人も捕まっているし、黒幕を法の下で裁ききれないからランサーズが正義を貫くのだと考えれば、黒幕は誰?と追及しなくてもいい気もします。 創立者(?)である礼門さんがランサーズを結成した理由や、深見が心の傷を克服して喋れるようになったり、警察との裏組織との確執だったり、とても広がりのある物語なので、長編で書いて欲しいなぁと、勝手に色々妄想してしまいました。m(__)m
4件・1件
あたるさん、うおお(!)深く読みこんでくださり、ありがとうございます。 お褒めにあずかった筆力…ううむ。身についているのか、書いている本人はなかなか実感が持てず…でも、あたるさんにそう言っていただけて素直に嬉しいです。急ぎ足で完結させましたが、ラストまで、堪能していただけたようでとりあえずほっとしています。 「与田をそそのかした黒幕」おっしゃるとおりなんですよね。この謎を解決せずにもちこしてしまっていて。 じつはこれ、小説ゼミの前にエブリスタの新潮社のイベントに出そうかと考えていて募集内容が「連作できるミステリー」とのことで、続き物になる可能性を感じさせたほうがいいのかな??という発想だ
1件

/1ページ

1件