湊カズサ

 最初に倶楽部の狂気にあてられたのは新参者である一年生、猫屋ブラザーズ率いる猫屋会だった。恐れ戦いて立ち去る途中で、運悪くとある派閥と遭遇してしまう。それは大具足虫忠太の派閥。酷くテンパって、それに喧嘩を売ってしまったのだ。  普段の大具足虫ならば、猫屋会など簡単に返り討ち出来た筈だ。だが彼らは敵対する派閥を討伐した帰り際だった。ダメージも蓄積していたし、なにより極度に腹ペコだった。故に両者の戦いは、大方の予想を狂わせて激しいものとなる。  それでも大具足虫の強さは比類なきものだった。アバラを数本折られ、配下を数人病院送りにされて、山盛りのウンコを漏らし、それでも辛勝した。  勝つには勝った。だがそれで良かったのだろうか? 彼らの学年には、まだ多くの敵が存在している。チームルシファーズシード、金髪と赤べこのゴールデンコンビ、そして大友のかっちゃん。自分達がこんな状態では、誰かに飲み込まれ、深い闇に沈んでいく恐れさえあった。  そして彼は、そこで悪魔の囁きを訊いたのだ。『だったら上級生に、一年生のてっぺんとしての地位を、認めて貰えばいいじゃねーか』地面にひれ伏す、猫屋兄の不用意な一言だ。それで事態は思わぬ方向に動き出す__  こうして裏取引を行った大具足虫は回復と共に行動を開始する。ルシファーズシード派閥と大友のかっちゃん派閥が小競り合いを仕掛けている戦場に、どてっぱらから強襲を仕掛けたのだ。  思わぬ展開に両派閥は大混乱に陥る。結果彼らは多くの戦力を崩されて、敢えなく敗走する。  時代はまさに群雄割拠する戦国乱世、誰かが台頭すれば別の誰かが滅んでいく。ただの雑魚だと安易に考えていれば、そこから歪みが生じる。二度と負けまいとする敗残者の覚悟こそが、この世を動かす原動力だから。

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