猫熊太郎

 とても面白かったです。  物語としての舞台、設定が本当にきっちりと練られ、ストーリーにそれが直結しています。  ありがちな、設定ばかりが過大になってそれをドラマへと昇華できない類の作品ではなく、  本当にその枠組み――骨組みが判然として、一本の筋を通しております。  主人公の過去から、物語の山場へと繋がるまでの線がはっきりと。  作者さんの堅実な知識に彩られ、ストーリーや細かな設定すらもこの上なく良質なものです。  惜しむらくは――  他のレビューの方も評していた通り、  この重厚すぎる文体と「くどい」とそういって差し支えない描写の重複でしょうか。  それも含め、”戦略”が少し方向違いという点も。  この作品、ライトノベルと分類されていますが――  活字離れが著しいラノベ読者の層を相手どるには形勢が悪いかと。  明言しておきますが、ラノベとして話が面白くないという意味ではありません。  めっちゃ強いヒロインに、最終的には(半分百鬼に)転生してチート能力を得た主人公など、要素としては十二分なのです。  問題は、話が面白いと思えるまで、読み進んでくれないだろう点です。  作者さんの持ち味であるこの重厚な詰め込む文章を犠牲にして、テンポを得なければ、まさに賽の河原でしょう。  それが、なんとも歯がゆいです。  この作品、「こんなにも面白い!」と声を大にして言いたいのに、じゃあその手合いに薦められるかと問われれば言葉に詰まります。  自分も「面白いモンは面白いやろがいっ!」――  と、啖呵を切る人間ではあるのですが……  やはり世の中そう単純ではありません。  逆に、ではターゲット層を引き上げて考えると、  今度は主人公達が子供なのが不自然になってくるでしょう。  「こいつら達観し過ぎやんけ! てか、こんな女子高生イヤやわ!」  ――という具合です。    ラノベであるなら、登場人物が10代であるのは突っ込むのも野暮な絶対的事象です。  しかし、一般に於いてはリアリティ(説得力という意味合いでの)が無くなってしまいます。    と、このように何とも評するのが難しい作品でした。  繰り返しになりますが、ホント面白いのです。  ですが、少しズレてしまっているという印象が残りました。  長々と言葉を費やしましたが、言いたいことは伝わったでしょうか。  駄文で失礼致しました。
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