月弓 ゆえ

雲のかげよりこっそりとレビューさせていただきます。 さあ今は、どれだけ心が充実しているのでしょう。 ジャンマルコ氏の優しさとリアルな「クセ」が盛り込まれた日常のひとコマ。 ゆっくり扉が開くような書き出しから、ゆらゆらと心地よくバスに揺られている錯覚を感じ、物語の中へと溶け込み始めます。 少々おっとりな主人公と、その愛に包まれ幸せをかみしめ暮らしているのであろう妻の微笑みに、思わず頬が緩みました。 わずかな揺れがあるのだとしたら、それは少々の不安。これからふたりに起こるのであろう、挫折や失敗を読み取れば、とたんに雲は厚みを帯びます。 ですが、作者はこのひと。 その不安すらも、ふたりなら大丈夫だよと、暖かいオーラで覆ってしまいます。 しかも、ラストシーン数秒で。 おそらく、自身の未来に興味を持てなかった彼が、致し方なく故郷に連れ帰った妻の覚悟など、読めば読むほど味わいの深くなる作品。 半分以上が子供の彼と、だからこそしっかりしなくてはならないと励む妻の今後にエールをおくります。 ご婚約、おめでとうございます。

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