【コメント】

静かで優しい夜のこと

わたしはこの作風がとても好きです。まずそれを最初にお伝えしておきたい。「です、ます」調で書かれているせいもあるのでしょうが、とてもやわらかく温もりがあり、どこかほんの少し哀愁も匂わせます。童話のようですね。絵本でも行けそうな。ひとつ質問をしたいのですが、冒頭の「～テレビ番組を観る時間。答案用紙に丸をつける。バツをつける。三角をつける。今日の朝と昼は～くたびれているのでした。」とあるのですが、「テレビ～三角をつける。」までは同時系列ではないのですよね？そのあとの「今日の朝と～」からを読むと、採点業務はすでに終了しているようだと分かるのですが、最初に読んだ時に「あれれ？　どっちだ？」と引っかかってしまったもので。気になるところはそこだけでした。読み進めていくと、「一匹」という数え方の違和感も解消され、哀愁の理由であるとか、涙ながらの苦労であるとか、人柄（？）であるとかも明かされて、最後にはしっかり物語に取り込まれてしまう。見事だと思いました。うん。絵本ですね、これは。絵が浮かびます。幼い子供にも読み聞かせてあげたいけど、寂しい大人たちにも浸って欲しい。そんな素敵な作品でした。