赤羽道夫

経験から書く文章のリアル感は、想像で緻密に書く文を超える、というのが、僕の持論です。 どれだけ想像たくましくしても、現実の経験や体験にはかなわないのです。 同じように書いているつもりでも、文章にそれが滲み出てしまう。 本作品も、作者様の経験に基づいた小説で、いわゆる私小説といったジャンルになるのでしょうか。そのリアル感が屋台骨となって小説全体を支えているように思いました。 主人公メグミの長年抱き続けてきた気持ちを清算する旅は、たった1日だったけれども、その密度は高かったでしょう。 ここで江口と新たな関係に突き進まないところが、地に足のついた大人の態度なのかもしれません。 ただ、小説は作文ではないので、「もしこうなら、もっと劇的になったかな?」と思ったところがあったなら、大胆に変えてしまってもよかったと思いました。 メグミの気持ちには整理がついているので、きちんとまとまってはいますが、読者というのは貪欲で、もっと楽しみたい、と思うものですから。
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