覇王樹朋幸

 究極にまで無駄を排除すれば、そこには結晶しか残らない。  古来より日本人は、短歌や俳句といった、短い文字数の中であらゆることを表現しつくしてきた。何を表現したいのか、そのために必要となる文章は何なのか。この作品が目的とするものを表現するのにこの作品にて用いられた文字数は、恐らくは最少文字数である。つまり、無駄がないのだ。  最後の一文を読んだ時「斬られた」と、瞬間的にそう思った。愚直に、少しずつ、ボディブローやローキックを重ねるような戦い方ではない。その切れ味はまるで、映画「バイオハザード」に出てきたレーザーカッターを彷彿とさせる。  何か光ったのが見えた。  気が付いたら私は死んでいた。  出発地点からまるでレーザー光線のように真っ直ぐに目的地へと一切の無駄なく突き進む。本作の作者、◎○さんは「細かな描写が苦手」と仰っているが、しかしそれは作家にとっては一つの特徴に過ぎない。細かな描写ができれば文才があるということなのか、そんなことは決してない。自らの特徴を弱点ではなく武器として掲げ磨くことができて、それはようやく一つの「文才」のようなものとして光り輝き始めるのである。たとえ細かな描写ができる作者がいたとしても、それを磨こうと努めなければ、その者が書いた文章は無駄だらけな、ただ長いだけの駄文に成り下がる。その最たる例が他ならぬ私自身であることはこのレビューを見て頂いてもお判り頂けるであろう……!  本作は掌編、所謂「ショートショート」の可能性の一つを切り開いた作品なのではなかろうかと思う。
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素敵なレビューをありがとうございますT_T こんな文章を書けるようになりたい(ノД`)
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お気に召して頂けたようであれば幸いです! 大賞受賞、改めておめでとうございます!
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