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死に至る病
しのき美緒
2017/11/23 14:09
☆これを愛とは呼ばず☆ ここに一貫して描かれているのは自己欺瞞と自己陶酔。 主人公中夜(ちゅうや)は自分の二股愛で、半ばは捨てていた女性秋桜(さくら)を自殺に追い込んでしまい、その自殺を止めるために自分の半生を費やしついにその方法を見つけ出す。しかし……。 女性が死に至るまでは平然と他の女性と付き合い、死んでしまうと今度は自分の罪業を認めることができずに、女性を蘇生させる方法を考える。極めて身勝手な人間として中夜を造形している作者の並々ならぬ手腕に脱帽する。そして作者は中夜を断罪し、救済を与えない。 「どんなに僕が過酷な目に遭おうとも、あと何億回だめだったとしても、僕は彼女を『愛するが故の苦悩』から救うために闘い続ける。」 彼女が救われなければ自分も救われないから。彼女を死なせてやるという選択肢は中夜にはない。究極の自己愛をこの1文にみた。 本作にはもっと深淵な何かが隠されている、と思うのですが、現在のわたしの読解力ではこれが精一杯の読み解きでした。皆さんに是非読んでいただきたい問題作です。 一点、表現で聞きたいことがあります。 「止まない雨はない」は普通は絶望から希望へのフラグとして使われる表現と思いますが、ここではその逆になっています。これは意図的にされたもの、と考えて読みましたがそれでいいんですよね? 大変な知識と語彙、表現力を持ち合わせている作者様で、これが初投稿というのは末恐ろしい限りです。 以上、簡単で浅くて恥ずかしいですが、レビューとさせていただきます。 この度はイベントへのご参加、まことにありがとうございました。 しのき美緒
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