あーる

主人公の抱える得体のしれない不安と「何故?…」という疑問に一緒に巻き込まれ、引きずられるように先へ先へと読み進みました。 冤罪裁判が得意な敏腕弁護士の実。充実した日々を送っていたが、ある日、美しい容姿のバーのマスターとぶつかりすれ違う。その瞬間から、彼の日常が崩れ出します。 このマスター 清一の醸し出す雰囲気が、軽い口調と態度なのに影と妖艶さを感じる。なんとなくアンバランスな妖しさに、指先で肌をすーっと撫でられるような感覚を覚えました。 実が訳もわからず引き寄せられるように足を向けた、案内もないアンダーグラウンドな店。 もうこの時から、理論でなく本能で身体が動いてしまったのでしょうね。 その店で振る舞われた妖しく甘いカクテル。それを作るシーンに、甘い誘惑と少しの緊張感を感じ、実と一緒に魅入られ、喉の乾きまで感じるようでした。 実が夜な夜な見る美しい風景の中の恐ろしい夢も。 私の脳内では、森の中の青白く寒々しかった景色が、夢の謎が解けたとき、ゆっくりと優しい暖色に変わって行くのを感じました。 ひとつひとつのシーンに色がつき、香りがする。五感をくすぐる描写にいつも引き込まれてしまいます。 清一は実が自ら答えを探し当てるよう導いていく。不条理な世界でひとり重ねて来た時間と気持ちを一緒に実へと打ちつける行為が、強引なのにとても愛しく、切なく感じてしまいます。 以前はひたすらに正義を貫き、自己の揺るぎない信念に自信をみなぎらせていた実だったけれど、それもじつは知らずに眠っていた力が影響していた。 それを知り、本能が覚醒した実は、この人間の世界を独自の基準で裁き秩序を保とうとするのか、それとも、人間の愚かさを嘲笑い快楽的に過ごして行くのか… このあと、ふたりがどんな永遠の物語を紡いでいくのかとても興味深い思いで読み終えました。 最後に好きなシーン。 後悔を問う実の唇を「シー……」と清一の指が塞ぎ、歌うように言う殺し文句……もう、クラっとなってしまいました。 とてもセクシーなのにピュアさも感じる…素敵すぎます! そして、このお話を通して、またひとつたろまろさんの魅力を知ることができました。 本当に素敵なお話ありがとうございました。
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あーるさん素敵なレビューをありがとうございます! 『引きずられるように先へ先へと読み進みました』『ひとつひとつのシーンに色がつき、香りがする。五感をくすぐる描写にいつも引き込まれてしまいます。』 ←これ!! 物凄く嬉しいです^^  そして好きなシーンについて。 ついついミステリアスな展開なお話を書きたくなってしまうわたくしですが、もちろんBLがメインです!(笑 そしてお話ごとにテーマがあります。 今回のテーマは永遠の想い。快楽的に刹那的に生きているように見えても根底には流れるのは「一緒にいたい」という想い。清一の口から思いを伝えることが大事でした。 それこそが全ての理由ですもんね^^ 櫻
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たろまろさん、こんばんは。 お返事ありがとうございます! 受賞の興奮冷めやらぬ中、さらにこのお返事。 さらに血圧が上がってまいました(笑) はい。すごく気になっていた所なんです。 「五つの分類」とても意味深だったから。そこを何度も読み返していました。レビューで触れようかとコピペまでしたのですが、結局自分の思いを上手くまとめられず断念(苦笑) 普通なら、罪を犯す者=裁かれる者ですものね。 でも、裁かれず罪を犯す者がいる。無意識の中でそれを知っていた。何故なら前世では自分こそその存在だったから…ということなんですね。 うんうん、違和感というか引っかかりがあったのは、そういうことだったんだ。
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