ももたろう

『夢石』ですか、五千円ですね。 この石を握って眠れば、恋が叶うと。買いますよね、誰でも。 趣味は一に睡眠、二に睡眠、三四が無くて、五に睡眠ですか。 でもあくまでも表向きは「読書に、音楽鑑賞」ですね。いいですね。誘眠剤としてはもってこいですね。 そしてもちろん、彼は買ってきた石を握りしめて眠る。 一か月後、なんと電車の中で会った人は? 彼は、勇気を出して声を掛ける。 うわー彼女がもっていたものは、彼の石の半分で、それはぴったりと重なり合う。なんという素敵な話だ。 第二章は。第一章とどういう関連があるのだろうか? 最初は分からなかった。 何度か読み返してみて、理解できました。そうか、そうだったのか、長閑はあの二人の娘だったのか。 二十四になる長閑は、今父親の臨終の時を迎えようとしている。どうやら母親は彼女が小さい頃亡くなり、父親が育ててくれたらしい。 最後を悟った父親が、娘に手渡したものは、あの石ころだ。 葬儀の慌ただしさの後に訪れる寂しさ。その時に思い出したものはあの石ころ。 お母さん、これからはお父さんを頼むね。そんな気持ちに答えるように、母の涙が石からあふれ出す。 「いままで、お前に寂しい思いをさせてごめんね。お父さんのことは任せて、お前はもう一人で生きていけるよね。でもいつも見守っているよ」 そんな言葉が聞こえてきそうです。 とても短い物語ですが、余計なところは全くなく、しかも淡々とした表現にこれ以上ない温かみを感じます。 こういうのを珠玉の短編というのでしょうか。 すごくよくできたストーリで、とても心に響く素敵な物語でした。

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