ほっこり温かくなったり、ホロリとさせられる作品が多い著者さまだが、こういった救いのない作品では、徹底して「救わない」。  それは別段不思議なことではなく、常より美しい旋律に定評のある奏者が、突然ノイズをかき鳴らし、実験的・前衛的な作品を仕立て上げるのに少し似ている(かもしれない)。  一つ言えるのは、美しい音色を奏でる奏者ほどノイズも激しい、逆もまた然り。  ある日突然、上空に姿を現わした巨大シャンデリア=未確認飛行物体を神として、熱狂的に崇める人々が、そこからバラまかれる白い物体が積み上げ可能なことに気づき、“ライフ・タワー”を築き始める……旧約聖書のバベルの塔の物語をほうふつとさせるシーンである。  未確認生物=人知を超えた存在(宇宙人? 神?)に近づけると考えた民は、我を忘れて崇め奉るが、ほかでもない神もしくは宇宙人によって、恐怖のどん底へとつき落される。  バベルの塔の物語よりよほど凄惨な結果を描いている。  先述のバベルの塔のほか、タロットカードの大アルカナ“TOWER”の持つ意味からも分るように、古来から空高くそびえ立つ人工の建立物にいいイメージはない。  その行為そのものが神への冒涜に繋がりかねないからだが、現代ではそんなことはすっかり忘れ去られている。  ……などと妄想しながら読むのが楽しい、示唆に富んだ作品。
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とても丁寧なコメントに感謝しています。 限りなく星はあるようなので、きっと地球を狙っている宇宙人もいるのではないでしょうか。
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妄想丸出しレビューになってしまい恐縮です。お話から映像がありありと浮かんでくるので、ついつい調子に乗りました^^
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