折梨 平

この小説から感じる美しさは、色彩だとか鮮やかさではないもの。濃淡や混ぜ色のような、不思議な自然体で表現されているように感じました。淡く切ない、悲しいけれどそれだけじゃない、素敵な終末物語です。 どうすることも出来ない終わりに直面する二人の不器用な高校生が、それまでの自分達らしい最後を二人きりで過ごすことに決めます。素直になれないからこそ素直に、器用になれないからこそ不器用なまま、互いの存在と自分達らしい興味に縋り、その時を迎えた彼らの表情を思うと、胸が締め付けられるような切なさに駆られました。それに至るまでの学校で過ごす数日を、淡々と過ぎ行く日々の流れと回想を交え描かれていて、無機質にも思える校舎や部室(教室)が、「二人だけの世界」であることの意味を重要に強めていました。思わず二度読みや逆さ読みをしてしまって、随分この作品にハマってしまったなぁ、と。 この作品でイベントで大賞を獲得されたとのことで、この小説の表紙として鉢戸ヒカル先生の美しいイラストが入るのを、楽しみに待ちたいと思います。素敵な小説をありがとうございました。

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