瑠璃川琥珀

この作品をどう表現したらいいのだろうか。 作者が書いたシナリオを、ぐちゃぐちゃにして、あちらこちらにぶん投げたようにも見える。 だが、かなりの精度を持ってぶん投げているのが分かる。 作者の言葉を借りるなら、「奇想」。この言葉が似合うと思う。 伏線だと思ったことがミスリードで、一見変哲もない出来事が伏線になっている。そのやり方が絶妙に上手い。 いや、このミスリードでさえ見つけるのが難しく、それなりの精度を持って拾いに行かなくてならない。 この作者のこの作品から読み始める人には注意が必要だ。 日常的なブログを読まされて、意味が分からず途中でやめてしまうのは実にもったいない。 最後まで読みきれば、これがいかに精巧に作られた本格ミステリかを思い知らされることだろう。 誤解してはならないが、ブログ自体も読んでいて楽しい。作者の文章表現は実に上手く、また、オッチーやトクちゃんと仲良くなれそうな気さえしてくる。 そして、最後のオチ。 それに至るまで、ジェットコースターのように乱高下しながら酔わされたあげく、叩きつけられた衝撃の破壊力は凄まじい。 だが、最高の快感を味わうことが出来ると思う。 そして読了後、作者の存在を疑いたくなる。 小池正浩氏は本当に存在するのか? 小池正浩氏はすでに死んでいて、誰かが小池正浩を騙っているのではないか? そんな虚構と現実の狭間に立たされてしまった私は、この作品に魅了されてしまったと言える。
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