倉橋

 この作品。「大化の改新」「平将門の乱」「大仏建立」「平清盛」「承久の乱」といった歴史上の事件や人物などのエピソードが、歴史上の人物の掛け合い漫才的なやりとりで展開していくアンソロジーである。  吉本新喜劇で日本史を観るとでも言うのだろうか!  歴史ファンの僕も、とにかく面白く読めた。  手を抜いてないというのか、コミカルに描いていても、ポイントははずしてない。  むしろ等身大の人間たちによる真の歴史が目の前で展開しているような趣きを覚えた。  同じくエブリスタに投稿されている磯崎薫さんの『十六夜狂詩曲~新説義経記』(これもすてきな小説だ)を読んだ時にも思ったことだ。  「なんという神の如き」英雄や傑出した人物が、「歴史」をつくっていくような幻想を吹き飛ばしていく点がとにかく痛快だ!  大河ドラマで描かれるようなストーリーより、間違いなくこっちの方が真実に近い。そう思わせてしまう説得力がある。  行基や相沢忠洋を取り上げていることでも分かるように、作者のつくりあげている歴史は、断じて付け焼刃ではない。  「歴史的発見」から除外されたうえ、その後も生活苦と戦いながら研究活動を続けた在野の考古学者、相沢忠洋の悲劇について、かつて「週刊朝日」が記事にしたことがある。 発見の栄誉を独占した学者は、その後の相沢をフォローすることもなく冷たい態度を取ったことまで書かれている。  すでに多くの読者を獲得している作品だけど、歴史ファンとして、この作品がもっと評価されて欲しいという思いもあり、このレビューを書いた。
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