大河原洋

私は福島県郡山市に在住しており、立ち入り禁止地区の情報は関東よりも多く入ってきます。 立ち入り禁止地区では生態系が狂い、野生化した牛や猪豚の繁殖、アライグマの増殖など大変なことになっています。 そして、私が一番印象に残ったのは、町が緑に飲み込まれていく様です。 人が住まなくなった家々は育った木々や草に飲み込まれていきます。 この場所には戻りたくても戻れない人達が大勢いました。多くの人は戻るのをあきらめて、新たな暮らしを始めています。 でも、戻りたいと思ったまま亡くなった方、自ら命を絶った方もいるのです。 そう言った人達の思いはどうなったのか、彼の地に戻ったのではないか、そんなことを考えることがあります。 前置きが非常に長くなってしまいましたが、この作品を読んで故郷に戻りたくても戻れなかった人達のことを考えされられました。 立ち入り禁止区域に置いて行かれた『なむけすこ様』とそこに住んでいた人達の思い、それは悲しく、寂しく、辛いものです。 でも、それもいつかは緑に飲み込まれてしまうのかも知れません。 この話はそんな普段思わないことを考えさせてくれる、深いものでした。
1件

この投稿に対するコメントはありません