有月 晃

天才肌ピアニストの視点で綴られる、音感豊かな物語。 視点とは即ち思考、認知のトレースであり、読者は彼の世界観を追体験しながら物語を辿ることになる。路傍の草花に始まり、この主人公は情景を形作る細部に意識を向けがちな様子。 まず、その雰囲気がなんだかとっても格好良い。 音楽一家に生まれながらも主人公の規格外の才能はなかなか理解を得られず、それ故に唯一の理解者であった姉との関係を濃くしていく。長じて世界的なピアニストとなった姉とともに音楽活動を営む主人公だったが、その関係はいつまでも続かず…… 物語の鍵となるのは、言うまでもなく「トンネル」。 彼岸と此岸を繋ぐ以外にも重要な表象を惹起させるその存在感は、もう一人の主人公と呼んでも過言ではないかと。物語の中心にこれを据えることによって、諸々の概念の対峙がより鮮明に浮かび上がります。 著者の瑞々しい感性に触れ、ほの明るい読後感を得たら再読せずにはいられない。不思議な魅力の一編で、素敵な時間を過ごしました。ありがとうございます。
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晃さん、素敵なレビューありがとうございます。 もったいないくらいの深い考察で、書いた本人よりも多くのことを読み取ってくださっているような……。 ぜひ続きの展開を想像して楽しんでいただけたら嬉しいです^^ お読みいただきありがとうございました!
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