正しく読解できているかどうかまったく自信がないのだが、深い感銘を受けた。 まず、著者の圧倒的筆力に驚かされる。既読の作品『全然愛しくないクレメンタイン』とはまったく異なる質感、物語展開、クオリティに眩惑せずにはいられない。 本当に同一人物なのだろうか?(笑) * 「彼女」は殺戮を行う。そこに意志は働いていない。善も悪も存在しない。ただ殺すだけーーそうプログラミングされているからだ。 巨大ロボ、合体ロボ直撃世代の私が最初にイメージしたのは、某専用機だ。だが、私はキリコ・キュービィーのほうが好きだ。本作はあの昏さに近いものを感じる。 さておき、あえて女性体であることを鑑みるに、某融合個体つ○ぎがイメージにもっとも近いか…… 映像変換するしないは個個人にまかせるとして、殺戮マシーンは果たして蒼き溟海の夢を見るのだろうか? 課せられた任=殺戮を続けるうち、プログラムにバグが生じる。それは屠った人間の屍から抽出・濾過した「物質」をエネルギー源としているせいなのか? 感情をともなうようになった「彼女」はもはや、プログラマーにすら制御できない別物へと変質を遂げている。 それは“彼ら”にとって、「彼女」が無用の長物となったことを意味する。 凄惨の極みである血塗られた殺戮マシーンの行き着く先が、哀歌をともなう青い海辺というのが、何とも美しく象徴的だ。しかし、それもつかの間の夢に過ぎない。 著者の意図を正しくくみ取る行為より(お脳がたりなくて、解らないところもあるので)、激しく揺さぶられた自身の感情処理を優先する。 はたして「彼女」は本当の終着を迎えることができるのだろうか? それはいつ、どこで? “眠りから醒めた”そのとき「彼女」の視界に広がるのはーー。 内的な何かを確実に抉られる、硬質ながら物悲しい、哲学的思考をも誘発する凄味のある作品。
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ことりはねさん こんにちは、まさかのレビューをありがとうございます。 凄みがあるなんて……恐悦至極です。如何様にも取って頂いて構わない、趣味を色々詰め込んだこの話を深部まで読み込んで下さって感謝感激です。 目覚めさせられたあとどうなるかは、彼女がねむり姫か、それともブリュンヒルデかにもよるのではないでしょうか、きっと。
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彫石 始遠さん 本質から激しくズレているであろう拙いレビュー、恐れ入ります。 つい、自分が知っているもので脳内補完してしまいました。 目覚めるごとに、異なる特徴づけを延々繰り返していったらどうなるだろう?  はたして真に心が休まることはあるのかーープログラムが心穏やかな状態になるということそれすなわち、消去かあるいは上書きか…… 終着の浜辺にたたずむ「彼女」を、大いなる青へと誘われていく後ろ姿を妄想します。
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