赤羽道夫

最初、これは小説というより手記だな、と思いました。振り返った過去を告白する文章が続き、これがどうドラマチックに展開するのだろうかと、残りのページ数のカウントを気にしつつ読み進めていくと、終盤で思わぬシチュエーションに出会い、読者が呆気にとられているうちにエンドマークを迎え、空中に放り出されたような奇妙な読後感を味わいます。 終盤のアクロバティックな状況は、そこまでの文章から一気に次元の異なるステージに飛び移ったかのようでした。 しかし、ずっと見ていたという精霊の台詞を裏付ける伏線が前半にあれば唐突感なく、前半と後半が分断されたようではない、ひとつの小説としての完成度が高くなったかと思いました。
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