橘 実来

『帰省』拝読させていただいました。 東京の中高一貫校に通う中学二年の「僕」が帰省先で出会った同い年の少女。その出会いを通して、彼が心情の変化させていく様を冬の情景とともに丁寧に映し出されている素敵な短編小説です。 少年は頭はいいんだろうけれど、思春期特有のちょっとひねくれた感じで、感情をうまく表に出せないもどかしさが伝わってきます。 そこで少年が出会う同い年の女の子。ふたりの出会いが彼女の飼い犬である柴犬エルが少年に飛びついていくという設定も、亡き祖父が犬に好かれていたという点とリンクさせている点もなるほどーと唸ってしまったのですが、少女のキャラクター設定も絶妙。 あきづきさん作品ではよく舌を巻いてしまうのですが、こういった男女のキャラクターの配置が絶妙なんですよね。彼女は鋭い印象の少年と正反対。どこかぼんやりおっとりしている。抜けているといっていいくらい。その抜けっぷりに最初『僕』はイライラしてしまいますが、ゆったりとしておおらかな少女に、慕っていた亡き祖父の面影を重ね、次第にほのかな好意を寄せていく様子がすがすがしく、初々しい。 そんな二人を囲む情景もすごくいいんですね。東京からはそれほど離れていない田舎町の情景。雪がかすかに積もってひんやりとしているのに、柔らかに彼らを包みこみよう。しかも箱根駅伝も盛り込まれてお正月情緒もさらりと読み手に伝えてきてくれます。 澄み切った冷たい冬の空気。未来へとつながる二人の初々しさ。冬、暖かい部屋で、爽やかな味わいのシャーベットを食べたようなそんな読後感を得ること請け合いです♪
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美空さん。 お返事遅くなりまして大変申し訳ありませんでした! 素敵なレビューを頂戴しまして、本当にありがとうございます。 お世辞抜きで、このレビュー自体がもう文章も美しくて、自分の小説というのも忘れて惚れ惚れ拝読しました(笑) 『帰省』は実家に帰省中に書いたものでして、生まれた土地から離れて十年以上経ちますが、やっぱりホームというか、そこに居ると書きたくなるものが湧いてきて…ということが多く、他にも何篇か書いています。 中でも駅伝や福袋と自分の好きなものを詰め込んだり(駅伝が来る前に福袋は実話です 笑)、鬱陶しくも愛おしい家族との繋がりなど、自分でも好きな作品ですので、温かいレビュー
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あきづきさん♪ お忙しいなか、レビューへのレス本当にありがとうございました♪ 作家さんに喜んでいただけるだけでも嬉しいのに、拙いレビューを誉めていただいて嬉しさ倍増です。ありがとうございますー(〃∇〃) 『帰省』の舞台、やはりご実家、地元でいらしたんですね。風景が目に浮かぶようだったし、なによりあきづきさんの描写に愛情を感じました(*^^*) 私の実家は私が家をでたあと引っ越してしまったので、馴染みがない場所にあるので、羨ましい限りです。 駅伝、それに福袋! あきづきさんが一生懸命駅伝に間に合うように福袋を買いにいく情景をイメージしたら、笑みがこぼれました。大事な、大事なお正月の風景です
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