ネタバレ感想ありです。 高校へ入学して間もない羅々が『自分の存〇を少しでも確かなものにしたかった』と思う所、私も含めて誰もが一度は抱いたことのある気持ちではないでしょうか。 鍵を届けた彼に特別な感情を抱き、初めて性を感じ…お腹の奥で疼く何か。直接的な描写がないのにここまで密に想像させる文章に脱帽しました。でもその彼…千尋先輩は一筋縄ではいかない男性でした。 結婚が決まっているのに、羅々が千尋先輩のことを思い出す場面がボレロと一緒に流れていき、何て美しい文章なんだろう…と感嘆のため息。 千尋先輩とは対照的にどこまでも誠実な司君。母親のようにはなりたくないと千尋先輩と司君の間で苦しむ羅々の姿も印象的でした。そんな羅々を壊す綺麗な悪魔…「何だよこの悪い男は…」と引き気味になりながらも初めての性に羅々が惹かれたように、私も千尋先輩から目が離せなかった。そして千尋先輩は母親に対して羅々とは方向が逆だけれども似たような気持ちを抱いていたことが判明する所からまた更にグイグイと惹かれていきました。 羅々と千尋先輩の繋がりにも驚きました。悪魔のような千尋先輩ですが、羅々のことを愛しているのは本当なのでしょう。婚〇届に『ひとつの躊躇いもなく〇いてくれた』行動に感動しました。 直接的な名称は出てこなくても二人の会話文や繊細に書かれている描写。読んでいるとドキドキして次へ次へと読み進めたくなる気持ちが止まりません。 かなりさんの『砂糖』と出会ってからずっと考えていました。胸に残って消えないこの気持ちの理由と名前を。 自分にはない秀逸な筆力への嫉妬なのか?ただ好きな分野で面白い作品に出会って興奮しているだけなのか?素晴らしい文章を書くかなりさんへの憧憬の念だけなのか? 日常の中で思い出しては読み返し、私の頭の中にもボレロと花のワルツの旋律が流れる中ふと、「そうか。美しいものに触れたから、私は嬉しいんだ」と気づきました。 羅々も千尋先輩もやっていることはクズです。でもクズとは思わせない、二人がこれまで生きてきた背景や奏でられる音楽の中で、美しい作品が完成していきます。 羅々が壊れても捨てずにいたオルゴールのように、私の心の中にずっと残って消えない大切な作品となりました。 こんな作品に出会わせてくれたかなりさんに、ただただ感謝の気持ちで一杯です。 ありがとうございます*・゚(*^▽^*)゚・*
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