不幸な家庭環境に置かれた少女と少年のボーイ・ミーツ・ガール小説。 おそれながらごく簡単に、かつ乱暴にまとめてしまうと、この物語はそう呼ぶことができるだろう。 本当にそうであろうか? 作中に登場する少女は、母親の再婚により新しい父を得た。最初は素直に喜んでいる(もしかしたら彼女は前の父親と関係が良くなかったのかもしれない)。しかし、蓋を開けてみれば、彼は躾と称してむやみやたらに少女に手を上げる父親だった。 少女はあるきっかけを機にたまらず家を飛び出し、少年と出会う。少年は少女の同級生だが、お互いに話したこともなければ下の名前も知らない。しかし、偶然にも、少年もまた身勝手な両親による不条理を抱えていた。 この作品が単なるボーイ・ミーツ・ガール(もしくはガール・ミーツ・ボーイ)と呼んでしまうことが、なぜできないのか? それは、作中、特に後半に込められた強烈なメッセージによるものが大きい。 少年が少女を救うために発した言葉。起こした行動。それらはやや野蛮にも感じられるが、少女の胸と共に読者の胸をも撃ち抜く。 声を上げろ。後ろ向きな想いに囚われてはいけない。必ず前向きな打開策はある。 それは、この物語の少女の場合のように親からの虐待に限った話ではないだろう。恋人からの暴力、いじめ、パワハラ、様々なケースに当てはめることができる。そう考えると、この物語は弱者への強力な応援歌にも取ることができないだろうか? 若い世代だけではない、経験を重ねた大人たちにもぜひ読んで欲しい。あと少しの勇気が欲しいのは、きっと若者たちだけじゃないはずだから。
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チルヲさん、たいへん、たいへんありがとうございます。 丁寧なお言葉、まことに救われる思いです。
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