瀬古野

私は「苦難」のある物語が好きなんだ。 最近新作が出ると噂の十二国記を久々に読み返して思うに、あれはファンタジーの皮を被ったヒューマンドラマなのではないだろうか。 人の一生に苦難はつきものではないだろうか。 私は苦難があるからこそ、人は人らしく生きれるのだと思っております。 十二国記のジャンルはファンタジーであり、形式は異世界流転モノであり、主人公は選ばれし者であります。 近年にも似たジャンルや形式の主人公はおりますが、十二国記の主人公に「選択の自由」はほとんどございません。 また能力も並みであって、決して超人ではなく。 精神面に至っては「どこにでもいる普通の女子高生そのもの」であり、異世界に来て豹変することはないのです。 非常に泥臭いファンタジー。 だけれども、私はこの作品が好きで仕方ない。 束縛という不自由があるから、解放という自由がある。 そして不自由のもたらす貧しさを知っているから、自由のもたらす豊かさを実感できる。 十二国記は普遍的な人間の生を克明に描き出す物語なのではないでしょうか。

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