人との「縁」。物との「縁」。 「縁」を題材にした物語は数あれど、ここまで直接的に突き詰めた作品を、わたしは他にお目にかかったことがない。 散文的に、やや淡白に紡がれる文章。それは、現代社会の無機質さ、人の心の希薄さを表しているようにも思える。そんな冷めた色のない世界で、色を用いた手法で「縁」を繋ぐ「香子」。 「縁」を求めるモノたちにとって、彼女はどんなにか鮮やかに頼もしく映っていたことだろう。 しかしながら、「うせもの屋」の若き店主である「香子」は、お世辞にも頼りがいがあるとは言えない。強靭な精神力があるわけでもない。腕力もない。地位も金もない。どこにでもいる、思春期の少女らしく繊細な、生身の女子高生。 そして、彼女自身もまた、自分の「縁」を追い求めさまよう、悲しき存在であった。 その事実は、ラストに明かされるが、あえて最後まで伏せておいたことで、知ったときの衝撃度は高まり、作品の切なさをより押し上げる効果を生んでいる。 傷を負った人間は、優しくなれるとよく言う。傷を負ったことで痛みを知るからだ。 ならば、「縁」を求める客人たちの痛みを、願いの真摯さを、己もまた客人とも言える「香子」だからこそ、知ることができるのであろう。 この物語は、人との「縁」、物との「縁」を見つけ出す物語。いや、違う。脆く優しい店主の導きによって、想いと想いとの「縁」の深さを知る物語だ。
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チルヲさん、「うせもの屋」へのレビュー、ありがとうございますっ 香子たちのストーリー、こんな風に読んでいただけているんだなって嬉しくなりました。香子が、普通の女の子なんだけど、店の「主」であるという強さを持ってるところを汲みとってもらえたのが、やった、て感じです(≧◇≦) 描きたかった主人公が、ちゃんと生きてて感無量ですっ 短編から一年くらいかけた長いお話に、最初からずっと、応援頂いてて、筆力のパワーをもらっていました。 本当にありがとうございました!
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