宇南

 これまでずっと森山さんの作品を拝読しておりましたが、中でもこの作品は傑作です。  冒頭の幼女の視点、それが女子大生に成長した視点となり、女子大生の視点が鈴子の生きた歴史を追っていきます。そして読者は鈴子の視点に感情移入していく。この視点の移動が完璧です。最初の視点が女子大生でなく幼女の視点だったこと。これが、視点移動の外挿を可能にし、より自然に読者の視点を鈴子へ導く。なるほど。計算し尽くされている。さすが。唸りました。という訳で読者は自然に鈴子に感情移入していく。そして鈴子の恋愛を体験します。  物語はおどろおどろしい方向にシフトしていきます。しかし美しい。おどろおどろしいのに、美しい。ここが森山さんの真骨頂ですね。  傑作です。森山さんの最高傑作を拝読できましたこと、感謝いたします。  ありがとうございました。  宇南拝
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