天川夏織

これはとても素晴らしい小説だと思いました。少女と獣と化け物が作り出す物語世界が見事に描き出されていると感じました。すっかり話に引き込まれました。 乙一さんの「暗いところで待ち合わせ」という小説を思い出しましたが、内容的にはそれに引けを取らないぐらいの感動があると思います。 情景の描写も丁寧でとてもイメージしやすいです。特に化け物が逃げ出して洞窟をさ迷う最初のシーンは非常に繊細にリアルに描かれていて、導入としては申し分ないです。少女の置かれた状況などもとてもよく理解できました。化け物が敵である少女にだんだん心を許してゆく過程も心の変化がよくわかる描き方になっていて、また少女を救いたいけど自分の正体がバレるのを恐れる微妙な心理も、よく表現されていて、読みながらどうなるんだろう?と感情移入していました。ラストもハッピーエンドで、救われて良かったと思います。 欲を言えば、ストーリーそのものは淡々と進む感じで、ラストもそのままの流れになっていて、少し余韻が残るのにもったいない感じもします。あえて、必要ではないかもしれませんが、ドラマチックな会話で盛り上げるようなシーンが一つぐらいあってもいいかな、という気がします。さらに、ラストも化け物の気持ちをもう少し描写すると余韻を味わえるような気がするのですが、これはあくまで私の感想なので、気にしないでください。 とても素晴らしい作品に出会えて良かったです。
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コメントありかとうごさいます。 こんなにもしつかり読んで頂けて有難いです!!乙一さんの作品と並べられると恐れ多いです…… ラストは悩みましたが、可能性の多い終わり方にしました。未来は読んだ人次第ですね。

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