そんなに長いお話ではないのに、深く深く、物語に潜っていくような、そんな不思議な感覚になります。 そこは、人類はすでに滅亡してしまった世界。 しかし人類の遺志を継ぐもの、アンドロイドが暮らしている。 主人の最期の望みを叶えるために……。 人は最期の時に、何を託すのでしょう? アンドロイドは主人の遺言を叶えると、機能を停止します。きっと街のあちこちに、機能を停止したアンドロイド達がひっそりと増え続けているのです。 放っておいても世界は荒廃していくのに、どんな遺言を託されたのか、どこかでは戦争が続けられています。戦争の目的は多分失せ、戦争をする、という目的のために。 また「二人で幸せに過ごして」という遺言を託され、主人夫婦の生活をなぞらえて暮らしている二人のアンドロイドがいます。 一人は記録し、一人は記憶する。 一人は過去の感情を記録から取り出し、一人は感情を作り出すのです。 だからどこかすれ違う。人間のように。 そしてファジーな遺言を託された一人のアンドロイドは、全てのアンドロイドを死なせようとします。 死のリミットが見えたとき、夫婦のアンドロイドが見たものと見つけたものが、暖かいけれど切ないのです。 なぜならそれは同時に遺言を果たしてしまう事のような気がするから。 そしてファジーな遺言を託されたアンドロイドは、何を思いどんな選択をするのでしょう? どこまでもどこまでも、アンドロイド達の世界に潜っていきたくなりました。
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