白羽莉子

「」  お兄ちゃんはいつも難しい顔ばっかりしている。  エマはいつだってそう思っていた。優しくてみんなの意見に沿って一緒に動いてくれているように見せかけて、ヤンはいつも頑固だとエマは思う。乗り気じゃなさそうな仕事は顔を曇らせながらしているし、依頼によっては嫌がっで体のいいこと言っては逃げている。  父のこともそう。お金くれる迷惑な人としか思っていないのだと思う。確かに父は国の英雄。兄は英雄とは人殺しのことだと言いたくなる気持ちも理解できなくはない。  けれど、父はヤンにもエマにも優しい。大切に思ってくれていることは、エマとしてはよく分かっている。兄も分かっていないわけがない。だからこそ、墓参りは必ず行くべきだと思うのに。 「お兄ちゃんのばか!」  大声で意地ばっかり張ってと言ってやろうか。いや、そんなことしたら、一緒になんて行ってくれないか。

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