有月 晃

それがいつのことだったか、時には想いを馳せてみるのも悪くない
冒頭、目に入るのは若い女性のモノローグ。 どうやら、幼馴染の結婚式に向かう場面らしいが、なんだか立腹の様子。 以降、この女性の視点で物語が推移していく。 過分に一面的であり、恋愛を主題とするにいかにもふさわしい。 その相手は、いつでも一緒だった幼馴染。ずっとすぐ近くにあった、淡い芽生え。なのに、彼が選んだのはなぜか自分ではなくて…… 久方振りに幼かった時分の記憶を探ってみた。あの曖昧な感情はいつの間にか私の内に生まれ、それなりに私を困惑させつつ、こちらに気付かせる程の抵抗も残さずにするすると滑り落ちてしまったらしい。 ひょっとすると私だけでなく、多くの人にとってそんなものなのかも知れない、初恋というものは。そのことに気付く瞬間を捉えた。これはそれだけの掌編である。ゆえに、秀でていると言える。 さて、そんな中にあってアクセントとなった点をいくつか挙げてみる。 雪深い土地ならではの幼少期の挿話はまるで著者自身の記憶を垣間見ているかの如く、読者の脳裏に鮮やかな印象を赤く残す。 また、幼馴染と結婚相手の名がウェルカムボードでは英語表記になっていたり、終盤における「だいすきな人」「大好きな人」といった書き分けも、作者の言葉に対する艶やかな感覚を見る様だった。 かつて少年だった私としては、主人公の初恋の相手である「彼」の視点でこの物語以前の想いを想像してみたり。若やいだ苦みを伴う想像の余白すら、春にふさわしい。そんな作品です。 さくらさん、コンテスト準大賞、おめでとうございます。
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有月さん、こんにちは。返信が大変遅くなってしまいました。申し訳ありません。 だいすきな人、大好きな人の使いわけは自分にわかる程度のささやかなこだわりだったのに、気がついていただけた。申し訳程度に撒いた小さな種からでた芽を見つけて頂いたような、そんな感覚です。 一度書くことを辞めたのに準大賞を頂けるとは……本当に困惑しました 笑。けれどご縁でまたここにたどり着き、有月さんや皆様に読んでいただけた。こんなに嬉しいことはないですね。また私らしく書いていけたらいいなと思ってます。 有月さんの作品、好きなもの多いのでまた新作だされたらお邪魔させてください♪ この度は素敵なレビューをありがとうござ
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