懐かしのロマンス映画を見たよう
 はじめの一文から叙情的な雰囲気が漂い、ロンドンを舞台としている良い世界観が出ている作品でした。  まずは、読んでみた私の解釈のお話から。 マチルダはお金が大事だ、大好きだと言っていますが、愛情を金銭と認識しているように思えました。金銭を貢がれることが愛を注がれることで、自分にお金をかけて磨き上げることが、自分を愛してあげること、と認識しているように。 本当の愛を自分はちゃんと知っていると思っていて、けれども確実に世間とは認識が乖離している。彼女は頭の端ではそれをちゃんと理解しています。紳士の愛も、だからこそすぐには受け止められない。 なぜ、どうして、と自分に問うているようなところが、幼い子供のように見える。心の迷いが等身大で実によく書かれています。  また二人とも性的な関係から入ったのに、いつの間にか性的なところから隔絶しているというか、中にいて外にいるような一種の隔離世界を作り出しているように感じられました。  マチルダは頑なに「娼婦」と言い表すあたりが、心の縛られ方を表しているように読めました。 娼館から身請けされて、出てからも彼女の存在の枠は「娼婦」である。 この段階でまだ心のしがらみは取り払われず、娼館を出てもなお彼女は自分が「娼婦」である、と認識しているのがわかる。 それは最後まで続くのです。彼女は自分を生まれながらの娼婦だといい、きっと死ぬ時まで「娼婦の自分」を持ち続けるのでしょう。  はじめに出会った時は、女性としての魅力を最大限に発揮して「大人の女性」を作り上げているマチルダが、バーで会い、ベッドで目覚めた時からだんだんと相応の若さやいとけなさを取り戻しているように読めるのが、紳士さんに対して、自分を覆った娼婦の殻から顔をのぞかせ始めているように見える。 必要だとはっきりと言われないと不安になるところが、年相応の女性らしくてとても愛くるしい。 娼婦に身を落としたことや、奔放に生きたことを差し引いたとしても、マチルダはかなり運が悪く、男運もある様でない女の子だと思いました。 (この下から多少のネタバレあり)  多く読書をする人ならば、この作品のはじめのマチルダの本名が出てきて以降、セカンドネームが出てきてない事で、なんとなくですがぼんやりと「真実」という章題が何を指すのかは予測できたと思います。 →コメントに続きます。
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かくいう私も彼女の母親に視点が当たった時に、なんとなく察していました。 けれど双方の愛の重さを考えて、ハッピーエンドになるのだろうかと予測をしていました。 結末は読んだ人だけのものですので、伏せますが、読了後の余韻の重さは読むに値するものだと思いました。 若輩から申し訳ない事ですが、少しの批評を。  全体的にとても良くまとまっていて、雰囲気も描写も綺麗で良い作品だと思います。 多少の問題点をあげるならこんなふう、でしょうか。 名前と呼び名、定義としての呼び名が多く、情報が錯綜しているので、少し統一感を持たせるか、一文の中では呼び名を絞るかした方が良いかと思います。 また行間で雰囲気を見せる手
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