水品 正生

文芸社様から講評をいただきました。
>以下引用 ”帰り人”と呼ばれる宇宙外来人種と人間が共存する異世界を舞台に帰り人の病原菌に冒されて希少な不死の感染者となってしまったシルヴァが、仲間のガーディアンと共に各地で依頼を受けながら様々な冒険を繰り広げるSFライトノベル。本作品は主に。シルヴァが感染者となってしまった経緯と、同じく感染者のガーディアンであるヒロやコットンと出会うことになった事件とその顛末を描いた前半部とシルヴァ達が一緒に旅するようになってから十年後ヒロとのガード依頼満了を機にシルヴァがガーディアン資格取得を決意するにいった事件とその顛末を描いた後半部に大別されます。全体的に冒険活劇ミステリといった趣の強い作風ですがエピソードの合間にシルヴァとヒロの微妙で恋愛感情の機微といった繊細な心理描写を織り込むことで物語に重層的な深みと奥行きを与えています。総じて著者の感性と才腕が遺憾なく発揮された手応え充分の意欲作と言えます。物語の前半部では、シルヴァが感染者となったことやヒロとの遭遇を通して作品の基本的な世界観が自然な形で開陳されている点が秀逸です。シルヴァ視点の一人称小説という文体と相俟って感染者や不死化という特異な状況を描きながらも誰もが容易にシルヴァに感情移入することが出来るのです。またシルヴァと同じ不死の感染者でありながら、すでに五千年生き続けているというヒロの頼もしさや存在感シルヴァと同じ境遇に追いやられながらもシルヴァを姉さんと慕うコットンの愛らしさなどメインキャラクター達の愛すべき魅力を十分に引き出すことに成功している点は高く評価したいところです。物語の後半部ではゴルドが抱える問題を軸に進展していきます。彼は愛する姉のため極寒に閉ざされた故郷の街をなんとかしたいという願いを持って生き抜いてきた義と仁の漢ですがそんな彼の思いが空回りした結果彼の故郷で一悶着が発生してしまうのは皮肉です。後半部で特に見逃せないのはヒロの時渡りであかねの死を事前に予告した上で、その定められた運命をシルヴァ達がいかに回避するのかが大きな読みどころとなっている点です。読者を惑わす様々な謎や伏線トリックなどミステリ的な要素が濃密に絡み合ったエピソードになっているのも後半部の大きな魅力の一つですが最後のどんでんがえし的な結末には著者に見事にしてやられたと臍を噛む読者も少なくないでしょう。

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