小原ききょう

「浴衣の少女」
「浴衣の少女」 君に恋をしたのは、 ある祭りの日の夕暮れ時だった。 君の姿を見た瞬間、 僕は永遠を感じた。 この世界に永遠というものがあるのだと信じた。 この時間・・いや、この夏が終わらなければいい・・ そんな気持ちが、心のどこかに生まれた。 けれど、君の方は違うんだね。 君は僕の方を向いていなかったし、 誰の方も見ていなかった。 君はずっと横顔のままだった。 一瞬の永遠が、 浴衣の君が、 僕の前を通り過ぎていく。 そして、 僕と君だけしかいなかった音のない世界から 祭りの賑やかな音の世界・・現実に戻った。 そう、 君はただ、僕の前を通り過ぎていくだけの人だった。 お祭りの日、 初めて出会った浴衣の少女に僕は恋をした。
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