有月 晃

夕凪もぐら入門者から上級者まで楽しめる、昭和下町風味ラブコメ(前半
変種。色物。エキゾティックアニマル。 私の周囲の創作仲間を分類するとしたら、この作品の著者には間違いなくこういった肩書きが与えられるだらう。にも関わらず、時には企画主催してみたり、ギター奏でてイケボ披露してみたり、標準偏差の端っこに位置しながらも奇妙に大きな質量でもってマルチな存在感を放つ。 本人は幼女とか自称して巧く誤魔化してるつもりらしいが、入門者各位は騙されてはいけない。哺乳網トガリネズミ形目モグラ科クリーチャー。それが彼奴の正体である。 さて、レビューか。そんなものを物するのも久方振りなので、書き方を忘れてしまった。箇条書きで手短にいきませう。私が挙げる本作品の魅力は下記五つである。多いな。 1. 文体 読者は読み始めてすぐに気付くだろう。この作者の何とも言えない不可思議な文体。相も変わらぬ東海もぐら節。手を止めて考え始めると日本語がゲシュタルト崩壊し始める水準なので、決して視線を行きつ戻りつさせてはいけない。速やかに一気読みしてこの棊子麺文体の喉越しを楽しむのが通である。 2. 諧謔 冒頭から矢継ぎ早に繰り出される笑うに笑えない昭和風味の諧謔。「諧謔」と書いて「ジョーク」と読む。こちらとしても反応に困ること請け合いであるが、そんなの知ったことかとばかりに延々と綴られる変化球の数々。読者はきっとこう思うだろう。「これはきっと序盤だけの掴み。いわば作者によるサービスタイム。物語が進むにつれてこのテンションも落ち着いてくるはず……」 心配無用。終幕までずっとペースは落ちない。そして、これらの中に一球たりとも直球がないことも特筆に値するが、それに気付いたからといって特に誰も誉めてはくれない。アイスおごれ、もぐ。 (後半に続く……
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