赤羽道夫

「たとえ君の手をはなしても」の感想です。 人間の隠したい闇を掘り起こし、味付けして見てくれ良く出された料理といった感じで、読者は食べたその味に驚く、といったのが、基さんの小説の印象。ある事情で不幸になった人が、最後には救われるのではなく、血反吐をはきながらも自身の力で歩み始める……そこが基さんの小説の特徴なのかな、と思ったりします。本作品もそんなテイストで、登場人物はおのが試練に立ち向かう。光という名が象徴する輝ける存在の姉と、存在が希薄でまるで透明人間のようだと自己認識する弟・透。ネーミングにも気をつかっているのも、ニクい。 最後は水戸黄門のような立ち回りも楽しい。 承認欲求に振り回されるのは、「神絵師」と同様のテーマで、基さんはもっと深く突き詰めていくのかな、と想像しました。 裁判を傍聴に行ったり、横浜やタワーマンションの建つ地区を取材したりして、しっかりとした筆致で描かれた、安定した文章は、今後もなにかを問いかけるような作品を産みだしてくれるでしょう。
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赤羽さん、感想をきかせてくださり、ありがとうございます。 >>ある事情で不幸になった人が、最後には救われるのではなく、血反吐をはきながらも自身の力で歩み始める この部分、とてもうれしかったです。 私の作風は、けっして楽しくて軽快な感じではないと思うんですが……そういう闇の部分を書き込むことで救われた気持ちになる人も世の中にはいるかな、と思いつつ書いています。 「沢村さんは、承認欲求にふりまわされてちょっとバグっちゃう人が得意だと思うんです」というのはエブリスタ担当様の言葉で、「おー、そう期待されてるなら、それでいきましょう!」という気持ちで書きました(笑) 取材、時間に余裕のないなかででき

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