二瀬幸三郎

SFラブロマンスという姿の思考実験
二瀬幸三郎です。 拝読いたしました。 最初に抱いた印象は、〈ウルトラQ〉の〈1/8計画〉でした。 食糧難を迎えた人類が選んだ道としての[縮小化]…… 過去、SFで描かれたことが幾度かある題材ですが、既にその計画がほぼ完遂され、その中で[ノーマルタイプ]として通常の人間(巨人)が登場し、その扱いを描いた作品は珍しいかも知れません。 [巨体]を活用した労働力として、更には[縮小化によって失われた人類の繁殖力]を補うために管理される世界―― その中でノーマルタイプの万太郎とスモールタイプのキョウコが恋をしたことから、世界の[歯車]が狂いだしていく様子が垣間見えました。 前代未聞の結婚式から始まり、巨大宗教の台頭、制御に躍起になる政府、そして、遠隔操作による[処刑]に怯えながらも愛を貫き、逃走する万太郎とキョウコが行き着く先で迎えた結末とは…… 縮小によって食糧難を解決した代わりに繁殖力を失った人類…… [生まれた]と聞かせ自由を取り上げられた[クローンの巨人]…… 愛する二人が行き着いた村で出合った、[老いた旧人類]…… どう見ても[絶望と云う将来]しか見えない世界ですが、最後にキョウコが万太郎から授った[新たな命]が唯一の[慰め]になりました。 こう云った[思考実験]的な物語もまた、SFというものが持つスタイルのひとつであることを改めて感じさせて頂きました。
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二瀬様のような方からこのようなもったいないレビューをいただき、感謝の極みにございます。ありがとうございます。 確かに本作は思考実験でした。SF設定が立ちはだかる困難となり、それをどのように二人が乗り越えていくか、そういう実験でした。幾つかの行く末が考えられました。例えば、キョウコがカルトアースの教祖になるなどの案もありました。でも結局、物語はそこに行き着きませんでした。 レビューありがとうございました。二瀬様の作品も楽しみにしております。これからもよろしくお願いします。 宇南拝
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