直田 麻矢子

喜劇であり、悲劇であり、ホラー……
この作品は、わたしが個人的に好きなので大いに主観になりますことを、先に述べさせていただきます。 面白い! 理由は、人間の存在意義や相違が喜劇になっている点です。 花ちゃんの天然ボケというアイデンティティが、長所という面ではまっすぐな性分と優しさを、それが周囲と自己との境界線を曖昧にし、他者から安易につけ入る隙を与えてしまっている――その部分は短所でもあります。 けれども、悪意のないところもまた優しさであり、他者から見れば悪気のない部分が、いけすかない人物に受け取られる可能性もあるのかもしれませんが、愛嬌があって、わたしは可愛いと思いました。人物描写が秀逸です。 一見すると、コメディなのです。しかし、ホラーにもなり得る。これは、ものの受け止め方の違いも表現されていて、わたしは作品に魅了されます。 さらっと書かれていますが、実に深い。それは、作者さんがたくさんの作品を読まれているからだろうと推察し、また人間の心理を突き詰めて思考されるからだと感じます。 人間という生き物は興味深く、一言で説明できない心理や思考もあり、追究するほどに見失いがちになり、曖昧になり、混沌として抜け出せなくなります。また、言葉や単語というものは、それ自体に強い意味がありますが、しかしながら一人の人間が抱えているすべての感情を寸分違わず表現できる万能な道具ではありません。 作中にあるちぐはぐは、単なる行き違いのようで、しかし、他者との理解の相違は現実社会に往々にしてあります。特に、作中にあるような文字だけの世界では。 花ちゃんは恩義を一途に受け止め、また菅さん(笑)もひたむきに溢れんばかりの愛情を注いでいる。 彼岸花、菊の花の回想で、菅さんにも、天然ボケの片鱗を見ました。ちぐはぐな関係性であって、相思相愛のごとく見えますが、二人が考えている内容がそれぞれに違います。相違があるまま言葉を受け止めて、各々の解釈で進んでいく。そこが冷静なまでに残酷で、現実的で、恐さ、強さでもあります。ですから、喜劇であり、悲劇でもあり、ホラー。――わたしはそう解釈しました。 人は生まれも育ちも様々で、他者と同一ではないために、生じてしまうやりとりのぎこちなさや、それぞれの考えで突き進む流れが存在します。 キャラクターがしっかりと設定されているからこそ、そういったクスリとする矛盾が描ける。
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(つづき) やはり、文才がおありです。そして、キャラクターを自己から切り離して描ける客観的視点もあり、冷静な突っ込みで、読者は現実へ引き戻されます。それが心地良くて、更新が待ち遠しいです。勉強させていただいています。素敵な作品をありがとうございます。
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