八神ユーリ

『異世界テンイ!』〜略〜…続き。 「…マジかぁ…」 家の外でボロボロになったロボットを見て涼はガッカリしたようにため息を吐く。 「初級だぞ…?冒険者の駆け出しが行く訓練用のダンジョンでコレか…」 胴体から外れた腕や脚のパーツを回収しながらまたため息を吐いた。 「まあそんな落ち込むな。2Fまで進めたんだ、結果としては上出来だ」 「いや、だって…俺があそこでミスらなければ…」 「また直して挑戦すれば良い、なんせ魔物との戦いは今回が初だからな」 気にするな…とおじいさんは涼の肩を軽く叩いて慰める。 「…視界が一人称視点だからな…こんな事ならもっと戦争ゲームをやっとくんだったぜ…」 おじいさんがロボットの本体を運び終えると涼は後悔したように呟きながら工房へと入った。 「…もう少し良い鉄が手に入れば装甲を強化して耐久性を上げられるんだが…」 「材料が高いからなぁ…早いとこ操作に慣れてダンジョンをクリア出来るようにならないと…」 遮光マスクと厚手の手袋をして、バチバチ!と火花を散らしながら溶接をしているおじいさんの呟きに遮光マスクをしながら見ている涼が気まずそうに答える。 「一応ダンジョンから帰還させた時の少しの材料は持ってるが…これは改良に使える物では無い」 「こんな質の悪い毛皮や爪じゃ…雀の涙程度だがギルドに売って生活費の足しにするか」 「そうだな、では頼む…今日中には修理は終わらせたい」 「はいはい…じゃあ行ってくるぜ」 おじいさんから手渡された袋を手に涼は家を出た。 行き先はもちろん、近くの村のギルドだ。 「…またのご利用をお待ちしています」 「…飯の材料でも買って帰るか」 魔物の素材の売却を終えた涼は近くにある八百屋から夕飯の材料を買い、帰路に着く。 「あーあ…上手くいかねぇもんだな、人生ってのは…なんか良い事はないものか…」 村から出た涼は周りに誰も居ないからか愚痴を零しながら空を見上げる。 「ったく、鳥は良いよな…空から見下ろせて…ゲームでの第三者視点って当たり前のように思ってたがあんなに有難いモンだとはな…」 はぁ…と愚痴をこぼした後に深いため息を吐いて重い足取りで帰宅した。
1件

この投稿に対するコメントはありません